第37回 太陽の光さえも造形に取り込み謎を秘めたカサ・バトリョ

ガウディは“人生は戦争である。戦う為には力が必要である。力は徳でそれは自ら支える向上精神によって蓄えられる”としている。

この徳は光りとなって人々を正しい方向に導いてくれる。
光り無くしてはものの物理的価値を与えることができない。
他に心の光りもある。
言葉によっては心に光りを灯してくれることを実感することがあることは、誰もが一度は経験している。このように徳を持つ光りが、ガウディの作品と協力者達との会話から、さらに作品の特性を浮き彫りにしている。

ガウディの建築における巧みな光りの利用は、見方によっては新鮮な技術であることは疑う余地もない。それを如実に感じるのは、午前中の光りによるカサ・バトリョのファサードである。早朝の光でより美しくみえるのは、恐らく日の出まもない低い角度からの斜めに差し込む光によってであろう。光はファサードをなめるように走り、磨き上げた宝石の様に輝かせる。
注意深くその外壁を見ると、壁面中央は波打つ膨らみがあるために、光りの当たり具合で美しく見える細工をしていることに気が付く。そこで気になるのは、その外壁に使われている素材である。
従来のモザイク・タイルなら釉薬仕上げのセラミックである。そのガラス面は数ミクロンの薄さで、確かに防水性を高める。ところがガウディは、この防水面の耐久性を更に高める事と光りの反射をより強烈にするために、直接ガラスの裏面に着色して壁面仕上げとしている。
まるで破砕タイルの様に見えるのである。
更に気になるのは皿の様に丸いタイルである。
ここには8種類のサイズによるタイルがあることを実測から知ることができた。
この数は星座マップを見るときの星の大きさを通常8等分にしていることと一致する。
宇宙の星の数は数えきれないが、その大きさや光りの強さからも凡その等分にすることすらもできないだろう。
にもかかわらず地上で見える星の点を追いかけて、ある星座に物語を描くことは昔からのことである。

そこで皿の謎を解くキーワードは、その割付とそのサイズの数が偶然にも私が手に入れた星座マップのそれと一致するのが不思議でならなかった。
一方で現在、バルコニーの数が7個プラス1となっている。更に、ファサード中央の2カ所の窓にはバルコニーが設置されていないが、これは腐食して落ちたわけではない。
もしこの2カ所のバルコニーが存在していたとすればどういうことになるのだろうか。
ここで謎を解くキーワードとして、その7つ数を下に神話と聖書を覗いてみる。

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ドラゴンの話

そのバルコニーの姿をドラゴンの顔のような“アンティファス”(お面)として評価する人もいる。
ドラゴンがガウディの他の作品の中にも登場することから、ここでも同じ様に7つの頭をもったドラゴン登場となる。
またギリシャ神話やカタルニア地方の神話にも登場する。
この架空の怪物ドラゴンが、世界中に登場することから日常お馴染みの架空動物であることは理解できる。
その姿も地域によって様々で大蛇の様なドラゴンがあるかと思えばエリマキトカゲのようなドラゴンもいる。
ガウディのドラゴンでは、シウダデラ公園でワシの爪にトカゲの様な尻尾、しかも有翼で胸の部分はライオンのように力強く表現されている。

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この記事を書いた人

実測家、建築家・工学博士

バルセロナに住みながらガウディ建築物の実測とその図面化を行う。特にサグラダファミリアの実測図 (1/50 の断面アイソメ図)には5年、グエル公園の全体立面図には8年の年月を要した。実測の過程で、ガウディ建築に込められたデザイン・構造・神話、さらに地域性やアイデンティティを縦横に読み解いていく。その他、研究を生かして1998年からユネスコ・フォーラムの招請を受けてベラクルスのサン・ホワン・デ・ウルワ城塞修復計画ワークショップをする。以来、全国において、ガウディ、実測、 歴史、コード、作図についての説明を60回以上の展示会・講演会、まちづくりワークショップ活動と共に進めて現在に至る。特にガウディの煉瓦構造とその素材を生かした応用として北海道江別市のモニュメントBT1をはじめとして、ガウディの生誕の町リウドムスでのアルブレ広場では日本とスペインの特性を生かした改修計画、ガウディのデザイン手法を生かした東京都府中市の北山幼稚園のデザイン・設計施工を手がけた。2015年にはバルセロナ建築士会での田中裕也の作図展やサロンデマンガの作図展、続いて2016年には、初めて銀座の渋谷画廊にてガウディ建築の作図展を行った。





1952年9月30日北海道稚内市生まれ

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